- 絵画の歴史とか詳しくないので印象派と言われてもわからない。
- 東京京橋のアーティゾン美術館で開催中の「印象派ー画家たちの友情物語」についてどんな作品がありどういう展示なのか知りたい。
そんな方に向けて、ここでは始めに印象派について軽く紹介し、次に開催中の「印象派ー画家たちの友情物語」について紹介します。
アーティゾン美術館にて印象派の展示会~印象派ー画家たちの友情物語~
展示会の主役、印象派とは?
印象派とは1800年後半のフランスにて勃発した芸術運動が元であり、今ではその時代にかかれた絵画の作品・画家のことを意味します。印象主義とも呼ばれます。
絵画における主な特徴としては空間と時間による光の質感の変化を表現することに注力していることです。風景や人物を始めとした人々の日常生活における状況を忠実にしかし、作者なりの表現を交えた作品が多くあります。
印象派が影響を受けた3つの派閥・主義
印象派より前の派閥・主義としては大きく以下の3つがあります。
- ロマン主義:鋭い感受性をもって現代の出来事を情熱的に表現した派閥・主義
- 写実主義:現代社会の出来事をありのまま描くことで主張した派閥・主義
- バルビゾン派:都会にはない自然風景が持つ美しさを表現した派閥・主義
これらを並べてみると印象派というのはロマン主義や写実主義のような現代社会やそこでの出来事を対象とはせず、バルビゾン派での自然風景の美しさに対して、ありのまま描くことを主とつつ、鋭い感受性をもって作者の感受を表現する派閥・主義ともいえますね。
印象派が絵画歴史に与えた影響
印象派より後の派閥・主義としては大きく以下の2つがあります。
- 新印象派:画家の直観による筆使いだった印象派から、理論・科学的な筆使いによる画風表現を目指す派閥・主義
- ポスト印象派:印象派の成果を受け入れつつも印象派を反対することで、印象派を超克しようとする派閥・主義
どちらも印象派が主とした特徴に則りつつも、それを超えようとしたというところから、印象派が絵画・画家に与えた影響というのは大きいのだろうと思えますね。
石橋財団コレクション選 「印象派ー画家たちの友情物語」とは?
石橋財団コレクション選 「印象派ー画家たちの友情物語」とは2021年10月2日から翌年1月10日までアーティゾン美術館にて開催されている展示会です。

先に紹介した印象派の画家たちの約140点の作品を展示しています。
印象派時代の画家たちは各自が互いに切磋琢磨しながら作品を作り上げていました。これらの関係性を示す構成になっており、絵画を比較する楽しみもあります。特定のエリアを除き館内の作品は写真撮影可ですので、自分の好きな作品を記録することができます。
特集コーナー展示として、20世紀フランスにおけるワインや蒸留酒をテーマとした絵本が展示されています。印象派時代の後におけるフランスでの日常生活の一端を垣間見ることができます。
同時開催、森村泰昌のよるM式「海の幸」とは?
他に同時開催として、「ジャム・セッション 石橋財団コレクション×森村泰昌 M式「海の幸」ー森村泰昌 ワタシガタリの神話」があります。
森村の特徴は、自らが絵画上の人物に変装して新たな解釈を追加する自画像的作品の制作です。展示会では森村が青木繁の代表作『海の幸』をモチーフとした様々な作品が展示されています。
『印象派ー画家たちの友情物語』の感想
ここからは印象派ー画家たちの友情物語に実際に訪れた際の感想を記載していきます。
アーティゾン美術館にて開催されている「印象派」の受付は3階にあります。QRコードのチケットを機械にかざすと入場ゲートの門が開く仕組みです。
展示会は6階から始まるため、エレベーターを使って昇る必要があります。
6階、 森村泰昌のよるM式「海の幸」 の感想
6階の展示は同時開催の、森村泰昌による「石橋財団コレクション×森村泰昌 M式「海の幸」」です。先に示した通り、森村の展示では青木繁の作品が元になっています。
青木繁による絵画『海の幸』ではたくさんの人々が描かれていますが、その中でも唯一視線の交わる人に対して少し不気味さを感じました。
展示会では青木繁の『海の幸』を元にした、森村なりの『海の幸』がたくさんありました。青木作品を忠実に再現したものを始め、昭和版や現代版にアレンジしたもの、絵画を飛び出して3Dにて再構築した変化球な作品など。
アレンジしたものは過去からの推移についての表現もされており、昭和や現代ではどこか懐かしさを感じることができました。3D作品では立体的な作品になったことも加わり、正面から見た際の一般的な見方だけでなく、上面からのぞき込んだ際の作品もまた一風でした。
本記事の主目的は「印象派ー画家たちの友情物語」の感想ですので、そちらに移りましょう。足早に6階から5階に移動。
5階、印象派ー画家たちの友情物語の感想ークロード・モネ作品に感嘆
5階からは主目的の印象派の絵画作品が、ずらりと並んで壁一面に展示されていました。
エスカレーターを降りてすぐの入り口には、「印象派ー画家たちの友情物語」の展示会にて展示されている画家たちの人間関係を示した相関図があります。

上記の通り、イラストにて人物を紹介と人物間の関係を簡潔に記載されております。この相関図のおかげで各人の詳細を知らなくても安心して展示会の作品を見ることができますね。
展示作品の画風は人物像や風景画が多かったです。印象派が注力するのは空間と時間による光の質感の変化を表現するということなので、自然と多くなるのでしょうね。印象派作品が描かれていた1800年前半から1900年近くまでの、当時の生活風景を感じることができます。
印象派展示会にて最も感動した画家ークロード・モネ
個人的にはクロード・モネの作品に一番心惹かれました。風景からモネが受けた印象について、作品を通じて伝えてくるかのように感じました。

上記がクロード・モネの生前の写真です。モネの代表作には『印象・日の出』や『日傘をさす女』があります。しかし、アーティゾン美術館での「印象派」の展示会にはありませんでした。残念ですが、仕方がないですね。
ただ、アーティゾン美術館には代表作である『睡蓮』が展示されていました。

『睡蓮』からは色合い的にグレーを交えた画風であるため暗い印象です。しかし実際に対面した際にはモネの技術かところどころに黄やピンクを彩った風景によって、どちらかというと淡い印象を受けました。『睡蓮』では水面に反射した光の陰陽の強さに加え、水の流れまでの表現しており、まさに時間が経過するかのように想像できます。
他のクロード・モネの作品にて印象に残っているのは、『アルジャントゥイユ』です。

こちらも写真で見ると暗い印象を受けますが、本物を目の前にすると「自然風景が綺麗である」との感想が浮かびます。3分の2を占める曇り空の隙間に白が混じっています。これの関係が直下にある水面にも描かれているため、全体を通して軽やかな気持ちにさせてくれますね。
クロード・モネが印象派の軸となる画風を確立しただけあって、個人的には最も感動した作品たちでした。
印象派、5階の感想ーアルフレッド・シスレー
次の写真はアルフレッド・シスレー作の『サン=マメス六月の朝』です。

ここでは川沿いの道を中心とした何気ない日常の風景を描いています。始めに目につくのは木々の雄大な葉っぱでしょう。この葉っぱも単に緑一色ではなく、陰のあるところでは少し茶色がかった色合いで、光差す個所では黄色も入った淡い色合いになっていることがわかります。日陰になっていることもあるが、道路の奥行には人がいることが鮮明にわかります。他に川にはボートで移動している人も描かれています。
この場面はフランス・パリの南東60キロにあるフォンテーヌブローの森とのことです。本絵画が描かれた1884年当時では、非常にゆっくりとした時間を過ごしていたのだろうと想像できます。
印象派、5階の感想ーカミーユ・ピサロ
他に印象に残っているのはカミーユ・ピサロ作の『ブージヴァルのセーヌ川』やエヴァ・ゴンザレス作の『眠り』です。
カミーユ・ピサロ作の『ブージヴァルのセーヌ川』では青白い空とそれより濃い青色の川?湖?が最初に目に飛び込んできます。

細部をしっかりと眺めるとボートの近くに一人、枯れ木の合間に四人の人々が描かれていますね。
印象派、5階の感想ーエヴァ・ゴンザレス
後者のエヴァ・ゴンザレス作の『眠り』では女性が気持ちよさそうにうたた寝している場面が描かれています。

絵画を左右で半分こにすると寝ている女性とその正面にある椅子に焦点を当てた左側はとても鮮明に描かれている一方で、右側ではぼんやりとしかわかりません。作者のエヴァ・ゴンザレスによる意図的なものをしっかりと感じることができる一品ですね。
4階、印象派ー画家たちの友情物語の感想ーサイズ感の拡大による力強い作品たち
4階へと降りても印象派作品の展示が続きます。
4階での絵画作品は大きくなるのが特徴です。5階では両手を使えば一人でも持てそうなサイズでした。しかし、4階ではそうはいかなくなります。
サイズが大きくなると絵画から受ける印象も大きく変わりました。まず、重々しさが強く印象付けられます。特にこれまでの5階からのサイズ感からの対比もありましたので、個人的に最も感じました。他に絵画に近づくにつれ、筆のタッチが鮮明に見えるようになったもの印象に残っています。絵画に対する力強さが表現されているのでしょうか?
こういった、展示会の構成から主催の構想を想像するというのも参加の楽しみの一つですね。
印象派、4階の感想ーザオ・ウーキー
4階での最も印象に残っている作品はザオ・ウーキーによる『07.06.85』です。

青を基調とした中に白と黒を交えた作品です。私が本作品を見た際には、この色調から海、特に深海にいるのではないかと思いました。全面の白が海面の砂で、左側の青が海で、右側の黒がどこまでも遠く底が見えない海となりこれが深海に見えました。
遠めで一見した際に受けた印象はその後も変わることなかったですね。
絵画に近づいてみて、筆のタッチを見てみましょう。
海(かどうかはわかりませんが、便宜上このように表現します)の大部分では一筆書きで描かれていることがわかります。一般的に油絵は色を重ねるとそのいきさつがわかります。しかし、『07.06.85』では色の重ねということは無いように感じました。
一方で、海と砂の境目においては明らかに色を重ねていることがわかるかと思います。しかもこの作品では筆先で直接キャンバスに対して描かれていないです。おそらくたっぷりの絵の具を含んだ筆を勢いよく振ったのではないでしょうか?これによって、まるで水流によって、海面の砂が激しく動いた状況かのように思えます。
写真では比較する対象がないため絵画の大きさがわからないですが、実物で見ると大迫力で圧巻の一言です。これはぜひ、「印象派ー画家たちの友情物語」に参加し実際に見てほしい作品です。
Twitter上でのほかの人の感想
「印象派ー画家たちの友情物語」に参加している画家たちが互いに切磋琢磨した関係であり興味を持ち始めたようですね。本記事の感想では書かなかったですがそういった側面も確かにありますね!
安定感のあるシスレーの絵画が好みなんですね。こういった自分の好きな画家を見つけられるのも楽しみになりますね。
大好きな絵画とは具体的には何だったのでしょうね?
こちらの方はカイユボットによるピアノ演奏の淡々とした日常生活を描いた作品が好きだそうです。
印象派ー画家たちの友情物語の感想ー~補足事項~
コロナ対策
アーティゾン美術館では展示室内の混雑を避ける対策として、90分ごとの日時を指定する予約制をとっています。このため、入場できる人の数を制限しています。
たまに次の展示先に人がいるときもありましたが、その際には別の通路に行って展示作品を変えるといったことができましたね。
私が訪れた土曜日では入場人数も少なかったです。展示室内の広さと比べると人がいないといって差し支えないほどでした。
これらのことから、安心して「印象派ー画家たちの友情物語」の作品を鑑賞できると思います。
アーティゾン美術館までの道のり
2022年1月10日まで石橋財団コレクション選 「印象派ー画家たちの友情物語」展がアーティゾン美術館にて開催されています。
このアーティゾン美術館までの道のりについて紹介しましょう。
アーティゾン美術館までは3つの駅から徒歩5分圏内に位置します。
3つの駅はそれぞれ以下の通りです。
- JR東京駅の八重洲中央口
- 東京メトロ銀座線・京橋駅の6番・7番出口
- 東京メトロ銀座線/東西線/都営浅草線・日本橋駅のB1出口
駐車場はありませんので、車での来館できないので注意が必要です。
チケット購入方法
観覧料(税込み)は以下の通りです。
一般 | 1,200円 |
大学生・専門学校生・高校生 | 無料 |
障碍者手帳を保有している方 | 無料 |
印象派の起源となったモネを始め、切磋琢磨した印象派のたくさんの画家たちの作品が一挙に観覧できて1,200円というのは破格でしょう。ぜひ観覧してみてください。
購入時には公式サイトから購入するのがいいでしょう。
所要時間
展示会の規模も気になるかと思います。
石橋財団コレクション選 「印象派ー画家たちの友情物語」と「ジャム・セッション 石橋財団コレクション×森村泰昌 M式「海の幸」ー森村泰昌 ワタシガタリの神話」の両方を合わせて、私がかかった時間は3時間程度でした。
10時に入館すれば退館時には少し遅めのお昼ごろに、14時に入館すればお昼時を展示会で過ごすといったことができますね。
私は一つひとつの作品をゆっくりと見ていますので、気になる作品だけをピックアップして見るのであれば1~2時間で回ることができると思いますよ。
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