経済的自立には4%ルールに基づいた資産を貯めることで達成できると、書籍やSNSといったメディアでもてはやされています。
しかし、決してそんなことはありません。詳細な説明が放棄されており、経済的自立確保のための言葉として独り歩きしてしまっています。
この注意点と対策について説明します。
4%ルールだけでは全員が経済的自立を確保できない。その要因と必要な対策とは?
まず、4%ルールと呼ばれる元になった研究論文について説明しましょう。
この研究では、退職後、ある生活をしてもらって、退職当時の資金がどのようになるのかをシミュレートしました。その生活とは、退職時の資金から毎年一定割合を引き出し、残りを引き続き投資するのを30年間続けてもらうことです。
例えば退職時に1億円をもっている太郎では、毎年10%つまり初年は1,000万円で生活し、残りの9,000万を投資することになります。翌年には(9,000万 × 投資の利回り)の10%で生活し、残りで投資する、といった生活になります。
研究では、30年後に退職時の資金を崩すことなく過ごせた人と、そうではなく一文無しになった人の人数を数えました。結果として、95%の退職者が、一文無しになることなく生活できる引き出し率は、4%であると結論付けました。
言い換えると、全資産の4%分を生活費として引き出すのであれば、残金が30年以上残る可能性が95%であるということです。
ここから転じて、1年間の生活費の25倍の資金を貯めることができると経済的自立を確保できるとメディアは伝えています。
この4%ルールに基づいても5%の人は貯金がなくなってしまうという事実を説明せずに、はやし立てているということに直面してください。
5%という確率がどの程度の物なのか考えてみましょう。同じ30年間という期間にて空き巣ねらいに逢う確率が3.4%であります。空き巣被害に逢う可能性は低いでしょう。
しかし、4%ルールでの運用では、それ以上に一文無しになる可能性を秘めているのです。すべてが運に左右されています。
無一文の可能性を低減する「現金クッション」と「利回りシールド」
では、この5%の割合を引き下げる方法はないのでしょうか?そんなことはありません。
この問題を解決するために編み出されたのが、「現金クッション」と「利回りシールド」です。この言葉は初めて聞いたかもしれません。しかし、4%ルールに基づき経済的自立を確保した、クリスティー・シェンとブライス・リャンの書籍『FIRE最強の早期リタイア』では、しっかりと記載があります。
不幸な5%に陥らないようにこれらの考え方についてしっかりと理解することが大切です。
4%ルールにおける現金クッションとは?
現金クッションとは、緊急時に備えた準備金で、生活費のための資産取り崩しを避けるために設けるものです。
早急にいつでも活用できるように、金利の高い預金口座に貯めておきます。
不幸な人になるのは、混乱した市場で資産額が暴落しているにもかかわらず、生活費のために売却してしまい、市場の回復時に手持ち資金がなく損失を補えなくなる状況に陥った場合です。市場が暴落から回復までの期間で最も長かったのが世界恐慌で、5年必要でした。
最長でも5年の間、資産を取り崩すことが無ければ、一文無しになる可能性が下がります。では、いったいいくらの現金クッションが必要なのでしょうか?
4%ルールにおける利回りシールドとは?
現金クッションの金額を計算する際に忘れてならないのが、利回りシールドです。
資産はそれ自体で利回りとして、お金を生み出します。例えば、個別株式なら配当金や、ETFなら分配金などがそれにあたるのです。
1年間生活費の25倍の資産を持つ場合、再投資が不要なこの利回りは余剰資金になるため、用意する現金クッションから控除することができます。
利回りシールドとは、この資産が生み出す利回りを一時的に増加させるよう、投資先を切り替える方法です。一時的とは、長期的には4%ルールを確立した研究シミュレートでの利回りに合わせないと、前提が破綻してしまうからです。
長期的・安定的な経済的自立確保に必要な項目とは?
これらのことから、長期的・安定的な経済的自立の確保・維持のために、以下の4つについて整理することが大切です。
- まずは、1年間の生活費の25倍の資産を貯めましょう。
- 5%の確率で資金が底をつく可能性を避けるために現金クッションを用意しましましょう。
- 「現金クッション=(年間の生活費ー年間の利回り)×年数(ここでは最長5年を推奨)」
- 年間の利回りを高める方法として、利回りシールド方法を検討しましょう。
ここでは、年間生活費が250万で、利回りを1.5%、現金クッション確保の年数を5年とした場合を例にして計算してみましょう。4%ルールに基づいて貯める資金は1億円(=250万 × 25年間)になり、現金クッションは500万円(=(250万ー1億×1.5%) × 5年間)となります。
4%ルールまとめ
メディアで盛んにもてはやされている4%ルールですが、100人に5人は破産する可能性があることはあまり知られていません。
一文無しになる可能性を少しでも減らす方法としての現金クッション、利回りシールドについて紹介しました。実際に経済的自立の確保によるリタイアをする際には、これらの計算方法・考え方に基づいて用意しましょう。
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